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  • 私たちはこの動画についてよく考えるべきだ。一つには組曲『ニコニコ動画』が持つこの持続力についてであり、二つ目にはこの歌い手についてである。
  • まあ一つ目の話題についてはまあ別にいいんだけれど、二つ目については一つエピソードがある。かつて、友人のまいたけがこの歌い手の歌声を聞いていた。結構いい年の男性なのだが、どうしたって女声にしか聞こえないというのが、彼による触れ込みであった。このまいたけはおれなどとは違って、声真似などの動画を好んで見ていた。私はそんな彼によってこの歌い手りゃくを知ったのであるが、今日、ランキングに上に掲げた動画が上がっていた。私は主にランキングを上から下まで見る程度の仕方でしかニコニコ動画に関わっていない。しかし、いや、だからこそ、私はこの当該の動画に関して一つの考えを持つことが出来る。だがそれは些か複雑なものである。
  • ランキングというものが、ニコニコ動画の使い手全てが何らかの仕方で関わっているという点で全般的なものである、とここでは考えておく。如何なる使い手も、動画を自分のマイリストに加えることによってその動画をランキングに押し上げうる。それだから、ランキングそのものに興味がないとしても、動画をマイリストに加えるか加えないか、という判断を下す以上はランキングにその動画を入れるかどうかに関わっている。そのため、ランキングというものはニコニコ動画のマイリストというシステムを知っている使い手全てが、関わっていると言おう。それだから、ランキングに登ってくる動画には、それなりの、全般的な人気があると認めることにしよう。*1
  • さて、然るに、本日、りゃくがそのようなランキングに登ってきた。このことをどのように考えるべきだろうか。私は、上のようにランキングのことを考えているから、ランキングに登ってこないものには全般的な人気が無く、それらは狭い範囲のファンに好かれるに過ぎないと考えていた。昨日までのりゃくという歌い手は、そのように考えられていた。では、そのような歌い手がランキングに登ってきたときには、どのように考えるべきだろうか。一つ目の選択肢は、実はりゃくにはそもそも全般的な人気を獲得するだけの実力があったのであり、これまではたまたま衆目に触れる機会が少なかったのだ、と考えることである。二つ目に挙げられる選択肢は、りゃくという歌い手はこれまでランキングに登ることが出来ない程度の人気を獲得することしかできないような実力しかなったのであるが、時間が経過することによって「成長」し、実力を伸ばした、と考えることである。三つ目は、今回の事件はただの偶然だと考えることである。――そもそも歌い手には「実力」などといった、或る程度の期間高い効果を発揮し続けるような性質はないのであり、発表した作品がたまたま人気を獲得したりしなかったりするに過ぎない、と考えることである。
  • さて、この三つの内、どれが本当であろうか。もう少し、考えてみることにしよう。
  • 嘘です。考えません。

*1:そこで、(私のような)主にランキングばかりを眺めるニコニコ動画の使い手と、(私の友人たちのような)ランキングを直接見ることはなく自分の興味のあるタグを辿るような使い手たちとの差異について考察することは何かに対して有効であるかも知れない。しかしここでは考察しない。そのことを指摘するに留めておこう。