きんもくせいが咲いていた

きんもくせいが咲いていた。それは匂いで分かることだった。
わたしが連想したのは便所だった。便所にはきんもくせいの匂いが溢れている。
いや、むしろきんもくせいは、便所の匂いなのだ。
道を歩いてきんもくせいの匂いがすると、不潔なイメージを抱く。
では、わたしはきんもくせいの匂いが不快な匂いであると思っているのか?
不潔な所でかぐ匂いは不快なものであると、そう思っているのか。
なぜ、便所にきんもくせいの匂いを放つようにさせたのだろう。
きんもくせいはこの仕打ちに怒るに違いない。
だがきんもくせいは怒らない。木だから。
怒っているのは、わたしなのだ。
こうして快適なものは不快になるのだ。
こうして、美的なものと醜悪なものは入り交じり、
わたしを、混乱させる。