• 電子書籍か、電子書籍ね……。いい響きだ。
  • おれは結構な昔から、本に代わる新しい媒体の登場を待っているのだ。大体、活版印刷などというのものは、グーテンベルク以後の文化でしかないのだ。この、印刷本という枠組みに、我々は如何に囚われてきたか。
  • そして電子書籍といえども、本という比喩から自由ではない。果たして電子書籍は、紙をモニタにしただけのものか。それはこれから分かることだ。いや、きっと電子書籍は書籍ではなくなるだろう。きっとだ。
  • 私たちは本を軽蔑すべきである、と言ってみよう。私たちは本を軽蔑すべきである。本の形をしたものを憎み、本の形を為すべく作られたものには憐憫を。汝はきっと本というものから自由に創造されるべきであった。
  • 本というものは真の情報のあり方からすれば出来損ないであり、わざわざ森林を伐採して作った暴力の残響である。大体、情報など、目に見えないものではないのか。なぜ、わざわざインクで具現化した。なぜ、君が僕に情報を伝えるために地形を歪める必要がある。もっといい方法があるはずじゃないのか。どうして本をやめるのに 500 年も掛かってるんだ。馬鹿なんじゃないのか。
  • 本は骨董品だ。本は呪われている。本は、思いと言葉と、雨林と運搬労働とを空間の中に懲り固めて作ったおぞましい何かだ。だから、本を手に取るときにはそのことを感得しなければならない。本が美しいのはそのためだ。本は、不自然で、荒々しく、重く、そして美しいまでに悲しく非道く歪んだ品物である。