午後十一時頃から男の唸り声というか、叫び声というか、「うあ、うあ、うあうあうあうああああああああああああああああ、ああああああああああああああああああああ! あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」という呻き声のような声が聞こえ続け、午前四時になっても誰かがそんな声を上げ続けているものだから、レセプションのお兄ちゃんに言って何とかして貰った。その処置とは、おれの部屋をその男の泊まっている部屋から遠ざけるというものだった。…………えっ、その、叫んでる奴を何とかした方がいいと思うよ? 尋常じゃないよね? 無事なん? などとは思ったが、まあどうでもよいのだった。一応、彼はオーケーなのか? と聞いてみたら、「寝ているときに吐き気を覚えて、うなってしまうらしいんだ」とのこと。ああ。そう。

 で、部屋を移ってきたら、移る前の部屋とはちょっと設備が違っているのだった。移る前の部屋には、トイレットペーパーが無く、ティーセットが無く、机が無く、机用の椅子が無く、ハンガーを掛ける為の突っ張りが無く、枕元のスタンドが点かず、水道の締まりも緩かったが、移ってきた部屋には、トイレットペーパーが有り、ティーセットが有り、机があり、机用の椅子が二つあり、ハンガーを掛ける為の突っ張りがあり、枕元のスタンドは点き、水道の締まりも良いのだが、その分、暖房装置が無い。おかしいでしょう? おかしくないですか?

 思うに、移る前の部屋は、良くない部屋だったのだ。だから、インターネットに於いて特価で客を募集していたのだ。そういうのいけないと思います。それから、冬なんだから、客が入ろうが入るまいが、どの部屋にも暖房装置は用意しておくべきだと思います。と言いますか、トイレットペーパーが無いというはどうかと思います。トイレットペーパーが無いのみならず、トイレットペーパーホルダーもないからね。お前、お前、その、どんだけ客舐めてるんですか。いや、客を舐めているのではないかも知れない。ばれなければいいやの精神は、金稼ぎには必要なものだと思う。ああ。半端ねえな。マジ半端ねえ。

 ちなみにどちらの部屋にもティッシュは無い。ホテルっぽい装いを装い切れていない辺りが可愛らしい。おれが本当にただのバックパッカーだったら本当に楽しいんだろうけどな。周りのカフェも楽しそうだし。