A
まいりましたね。
B
ええ、まいりましたね。
A
今回はさすがに堪えたね。
B
うん。久々に敗北感を味わったね。
A
ほらまずさ、渡された日本語訳がさ、仏教用語で書いてあるわけじゃん。「有情(うじょう)」だのなんだの。
B
あれって、訳の体を為してないよね。意味分かんないじゃん。
A
端的に言って、あれは日本語訳じゃないわけよ。
B
だよねえ。訳の日本語文を読むために仏教用語を日常語に直すための辞典が必要だよね。「仏教用語辞典」。
A
そりゃね、そりゃあそういう辞典を買えば分かるんだろうけど、それって、訳って言わないじゃん。
B
……でもさあ、カントとかだって、そうじゃない? ほら、確かに哲学の本を見ればいっぱい出てくるような用語でも、始めは知らないわけであって…。
A
ああうう。そうだねえ。じゃあ、やっぱりああいう仏教系の知識は生徒側に前提されていても仕方がないってわけ?
B
や、それは、先生が知らない人のためにいろいろとサポートをするからいいのであって…。
A
……じゃああの人はそういうサポートをしなかってったゆうの?
B
や、や、そういうわけでもない…。あの人はちゃんと…。
A
じゃあやっぱりそういう知識を仕入れてこなかったおれが悪いんじゃないの?
B
ああううう。そうかも…。確かに参考書の推薦はもらったのであって…。
A
読み切れていなかったおれが悪いの……?
B
や! 待ってよ。そんなに悲観したもんでもないでしょ?
A
なんでそんな風に言えるのさ。
B
……だって惨めじゃん。
A
弱いなあ。
B
うん。がっくり来ちゃってるからね。
A
授業中は分からないことに対して怒ってたくせに。
B
うん。そうなんだよね。怒ってた。自分が理解出来ないからって。
A
……うん。そうなんだ。もうちょっと冷静に考えてみれば、もうちょっと、ほら、さ。
B
うん。そう言えば去年のギリシャ語の始めの方も、そんな風にして怒ってた。
A
だよね。
B
そもそもサンスクリット語をやるのは自己目的化しているのであって!
A
えなに。いきなりじゃない?
B
うん。いきなり。
A
まあ思考なんてのはそんなもんだけど。
B
でさ、サンスクリットをやるのはもう自己目的化してるのよ。かっこいいからっていう。
A
えー、でも、それって、なんだか…。
B
まあね、「自己目的化」っていうのはいつも否定的なニュアンスがあるけどさ。
A
そうだよね。
B
でも、ほら、ギリシャ調に言えば「それ自体のために求められること」っていうわけでさ。
A
ああなんか「正義」の説明みたいだね。
B
だからさ、自己目的化しているからって、それだけで退けられると決まったもんでもないっていう…。
A
まー…、そりゃ、そうかも知れんけど…。
B
サンスクリットをやることが自己目的化している「だってかっこいいんだもん!」ていうのは認めるんだから。
A
うん…。
B
だからもう結論は始めから出ているんだよ。
A
サンスクリットをするのがかっこいいから始めたんだから続けるっていうの?
B
やっぱかっこいいじゃん。
A
かっこいい…の?
B
かっこいい…じゃん?
A
うん。確かにかっこいい。
B
じゃあ。
A
もう決まってるのか。
B
そうだよ。ほら、もうやる気満々じゃん。
A
うん。実はそう。
B
あんな敗北感を味わったのに、ほら、次は逆襲する番なんだから。
A
おおおう。なるほど。そうだ。
B
だよ〜。ね〜?
A
うん〜。そうだわ。次こそ完全に予習してやるっていう気分だよ。
B
じゃ、いいじゃん。
A
だね。…この問題はもう解決かな?
B
いいんじゃないの? 解決で。もう行ける気がするでしょ? 次回は。
A
そう。行ける感じがするの。コンパウンドとかまとめてー、活用表を作ってー…。
B
ほら。いいじゃん。
A
おおーう。回復してきたー。
B
だよー。大丈夫だよー。
  • 対話篇にすると長くなるね。でも回復したよ。-21,50

★★22,46-

  • 蝶恥ずかしいよ。今日の記述の上の方で、「デーヴァナーガリー」を「デーヴァナーガーリー」と書いてたよ。早速直しておいたよ。こんなんだから訳が出来ないんだ、とかと一瞬思ったけど、基本的に打ち間違いなので関係ない。-22,47