• しょうがないからたまには生活のことを話しましょう。
  • 最近は餅を焼いて食べることがあるのですが、僕はオーブンがないんですね。で、レンジのトースト機能で餅を焼くことになるんですが、皿に餅を平らにただ置いて焼くだけだと当然焼けた餅は皿にべちゃあってなりますからそれはいけません。なので直方体の形をした餅の面の内、二番目に広い面を下にして置いて焼くわけです。だが今回分かったのですが、こういう風にして焼くわけですから、三枚を焼こうとすると難しいのです。二枚を焼くときには問題はないのです。何も考えずに並べて焼くだけでちゃんと焼けるのです。三枚のときには、ただ並べて焼くと、真ん中に置かれた餅が熱されないのですね。焼けないのです。それはやはり、レンジの中のターンテーブルが回るとは言っても、左右の餅に挟まれた真ん中の餅にはマイクロウェイヴが照射されないからなのでしょう。私はそれを見誤りました。失敗したのですね。それに気がついたのは脇の一枚を食べてからでした。脇の一枚にしても、熱の通りが悪くて、餅が堅かった。食感としてはナタデココに近かった。全体がそういう堅さであったわけではありませんが、一部が堅かった。ああ、これは二枚から三枚になって全体に対する「熱量」が足りないからなのだな、ああ、温める回数が足りなかったか、と思ったのです。二枚で焼くときには、トーストを二回仕掛けるのです。ああ、三枚になったら三回なのか。でも一枚に対して一回で済むというわけではないだろう。だから枚数と回数が一致するというわけではないだろう、そう考えました。しかし、二枚目の餅、件の真ん中の餅を掴んだとき、理解しました。これは、マイクロウェイヴが届いていない。マイクロウェイヴが脇の餅に吸収されて、真ん中まで透過していない。私はファットマンズイフェクトを思い出しました。ではどうするのか。三枚の餅には、醤油が掛けられており、もう二枚づつの海苔に挟まれています。私はどうすべきでしょうか。少々考えた挙げ句、私は愚直にもう一度トーストを仕掛けました。今は最早餅は二枚しかないのですから、そのまま特に策を弄さずとも適切に焼けるのではないか。そう思ったのです。しかし皿に残っている醤油、餅に張り付いている海苔の行方には気を揉みました。皿を再びトーストするのですから、当然醤油は蒸発するでしょう。ですが、海苔はどうなるのか。乾燥するのか。それとも醤油から発散された水分を受けて、湿気るのか。事実は、その両方でした。醤油は思った通り蒸発しましたが、海苔は、部分的に乾燥して焦げ、部分的に湿気ました。これは珍しい。だが感動はしなかった。私は餅の皿が赤い光に照らされて回っているあいだ、考えていました。三枚の餅を焼くときには、もしや、三角形を構成するように餅を配置すればよいのではないか。三枚の餅が、あたかも三角形の三辺を為すように配置するのです。そうすれば、その屋根のない三角柱に外側からマイクロウェイヴが照射されると考えるなら、どの餅も一様に焼けるのではないか。ではそのようにすれば二枚より多い餅を焼くことが出来るとして、しかし四枚でも焼けるのだろうか。その場合には四角形を為すように配置するのだろう。だが、そんな四角柱が、この皿の上に立つのだろうか。この皿は些かそれには小さいのではないか。では、一度に何枚の餅が焼けるかは、皿の大きさに依存するのか。そうかも知れない。しかし、レンジの中で回っている皿に載っているのは、醤油と海苔の付けられた二枚の餅なのです。今度三枚以上の餅を一遍に焼きたくなったときには実験をしてみよう。そのように思いました。