闇について

 私は悪ではない。私に優るものは私を擱いて他になく、悪に劣るものは悪を擱いて他にない。私が光を排除し、光が悪を打ち滅ぼす。悪の栄は私の故であり、私無くしては悪も無い。しかしながら私は悪が滅ぼされてのちにもそこにある。なぜか。そして私は何か。
 あなたが私と踊るとき、私はあなたを侮蔑する。なぜなら私はステップを踏まないから。ただあなたが私と踊っていると思っているに過ぎない。あなたが私と語らうとき、私はあなたにつれない。なぜなら私はあなたのおべっかには飽きているから。ただあなたが自らを貶めるに過ぎない。(それは報われぬ安売りである。)あなたは私を利用することが出来ない。私は動かない。私は求めに応じない。私は拝跪の音を嘉しない。では、私は何か。