歌と物語が不味いのは、誤っているからだ。それはもう、間違っているのだから。歌の中に幾つの宗教が歌われようと、幾つの神が歌われようと、物語の中に幾つの世界が描かれようと、幾つの生きと死にとが問われようとも、間違っているのだから。人が歌を歌うという時、物語を物語るという時、本当は歌も物語もない。ただ嘘が、それでなければ欺かれた歌い手と語り手だけがあるだけだ。せめて私だけは嘘をつかず、歌と物語に欺かれず、歌と物語が誤りであることを知り、そうして人の歌う歌と物語る物語でないものだけを聞くことが出来るように。