創造性を発揮して作った料理が大失敗だった件

  • 悲しい事件が起こってしまった。おれがやる気になって作ったオレンジミートソーススパゲティが、劇しく、まずかった。これはまずい。まずすぎる。食えない。普段は冷静沈着なこのおれもこの味には動じざるを得ない。せめてこの失敗をこれからに活かすべくどこがまずさの主因を為しているのか分析するのだ! と思って続きを食おうとしても、手が止まる。マジで。これはまずい。


  • しかし、手が止まるというのはその味に恐怖するからであって、同時にその味をよく理解しているということでもあるのだ。だから、おれは食わずとも分析できる。やってみよう。

これはなに? どうやって作ったの?

  • これはね、「オレンジソース」のスパゲティなんだ。おれは新条るるの漫画を読んで以来、オレンジソースというものに憧れを持っていた。しかし、当然のことながら本作の出来映えに関する一切の責は作者である私にある。
  • どこから語ったものかとも思うが、ともあれ、これはオレンジソースのミートスパゲティだ。オレンジ二個と、オレンジマーマレード半瓶が入っている。それだけだと甘くなってしまうので、塩味を付けてある。
  • ミートソースである所以は、挽肉がベースになっているからである。大蒜+玉葱+マッシュルーム+挽肉の組み合わせは、いつも作っているトマトミートソースの根幹部分と同一である。どうしていつものトマトソースにしなかったんだ……。それはね、うん。それはいつもトマトソースが上手に出来すぎるが故の奢りだったんだよ坊や。ううっ。反省します。
  • その根幹部分を作っているときは非常にいい感じだった。誠にいつも通りだった。おれはそこに、セロリを一本、刻んで入れた。昨日スーパーで、「セロリか○○(忘れた)か、この二択やな」そう思いながらセロリを取った。折角だからおれはこの健康志向なセロリを選ぶぜ! そう昂ぶっていた。傲慢だったな。
  • セロリを入れたところに、オレンジを二つ、刻んで入れた。そして、味見をしてみるも、薄い。ああ。じゃあ塩ですね。ブイヨンですね。鶏ガラですね。胡椒ですね。まあ、この辺はいつもの調子だった。
  • おれはクックパッドで事前に「オレンジソース」について調べていた。勿論そうだ。おれは抜かりない。だから、オレンジマーマレードを加えて作るオレンジソースがあることを知っていた。だから、入れてみた。
  • そうして、オレンジの果肉を潰しながら鍋で処理していると、イエス。水分が出てきて、ソースらしくなった。では、味見をしつつ、パスタの用意をするか。おれはその通りにした。

どんな味なの?

  • この料理の味は、そうだな。簡単に言うと「苦い温レモン」だろうな。な……何を言ってるのかわからねーと思うが、おれも何を食っているのか分からなかった。ちょっぴりおれの既存のスパゲティ理解を凌駕する遥かな体験だった。
  • 結論的に言うと、セロリが致命的だったのだろう。おれも、セロリを刻みながら思ったのだ。「これ、多くね?」。だが料理の創作性にノリノリだったおれは留まるところを知らなかった。セロリを一本刻んで鍋に入れた。やっぱ、セロリ一本は、多かったんじゃないか。まあ、多かったんだろうな。

失敗の原因(一)


セロリが多かったということ。

  • じゃあセロリさえ少なければ、或いはセロリが全く入っていなければ、うまかったか、というと、そうでもないと思う。「セロリが入っていなければうまかった」、等というフヌケタ条件文は圧倒的に偽だと思う。大体が、オレンジソースという発想自体が、おかしかったのだ。「それはオン・ザ・ライト・トラックなのか?」。答えは「ノー」。おれも勿論、鴨肉にオレンジソースを掛けたものを食べたことがある。あれは、オレンジソースが少量肉に掛かっているからうまいのであって、だからと言ってオレンジソースを腹一杯食ってうまいかと言えばそうではない。そうではないはずなのだ。おれはそれに前もって気付いているべきだった。
  • 創造性はときに罪である。おれは、己が創造的な仕事に携わっているという想いに脳髄をやられ、正常な判断が出来ずにいた。オレンジソースのぶっ掛かったパスタは濃厚なホットオレンジジュースのようなものだ。大体な、オレンジ系は暖めるなという原則に違反しているのだ。鴨肉に使われるオレンジソースは、少量だから、許されているのだ。

失敗の原因(二)


温めたオレンジソースが大量であるということ。

  • おれは、いつもスパゲティを食うときには 200 g を茹でるのだが、そして今回もそれだけのパスタを用意したのだが、半分しか食えなかった。これ以上は、食えない。「「食い上げ」って、知ってっか」*1。知ってます。でもそれは、まともな料理について言うことでしょ。これ、まともじゃないんです。作っちゃったのはおれが悪いけど、でも、全部、食わなくていいじゃないですか。
  • ごめんなさい。残します。


  • 自棄になり、トマトケチャップを掛けてみた図。が、それでも食えなかった。
  • なんでこの飽食の時代に、わざわざ失敗作まで食わなきゃならないんだ! ここ、日本、資本主義社会国ネ! そういう風に思うことにする。これは食えないでした。

教訓はなに?

  • 教訓……、そうだなあ。ま、あんまり突飛なメニューを作ろうと思うなってことかな。

今回の教訓


既存のメニューを尊重しろ。

*1:「食い上げ」は、この場合、出された料理は全て平らげるべし、という規範のこと。